第84回関西支部定例研究会
- 期日:平成22年1月23日(土) 14:00~17:00
- 場所:名城大学MSAT
- 講師:増田 弘氏(東洋英和女学院大学教授)
松島芳彦氏(共同通信編集委員:前モスクワ支局長) - 演題:(増田氏)「フィリピンにおけるマッカーサー」
:(松島氏)「シベリア抑留者七十六万人:ロシア側新史料の発見」
名古屋駅前の名城大学サテライト教室で研究会が開催されました(参加者21名)。
増田氏の報告は、すでに公刊されている『マッカーサー フィリピン統治から日本占領へ』(中公新書)をもとにした報告でした。日本では、マッカーサーという人物は、占領改革の観点から論じることが普通です。しかし増田報告では、マッカーサーが深く関与したフィリピンという視点から、今までの研究の再検討をはかろうとするものです。マッカーサーにとってフィリピンとは、日本の占領の予行演習の場であったと提起する刺激的な報告でした。
他方松島報告は、昨年マスコミをにぎわせた、「シベリア抑留に関する新資料、七十六万人分がロシアで発見」という、センセーショナルな数字を含む報道の背景に迫るものでした。新資料とは、モスクワのロシア国立軍事公文書で発見された、抑留者個人登録簿の検索カードです。この検索カードの意義が説明され、それが抑留者の身元確定につながる可能性が指摘されました。
増田報告が、従来のものとは異なる視座から歴史を眺めること、松島報告は、「新資料」とはどういうものであるかという批判的検討を行うことで、それぞれ、史学の醍醐味に迫るものでした。