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第44回(平成22年度)年次大会

【日程】 平成22年5月16日(日)
【場所】 國學院大學渋谷キャンパス(東京都渋谷区)

 今年度の年次大会は、國學院大學の協力を得て渋谷キャンパスにおいて「日本近代草創期の戦乱」を共通テ―マに開催されました。本テーマは、日本の近代国家形成過程における草創期の戦いとして、日露戦争までを対象としたものであります。まず、國學院大學栃木短期大学教授の田中正弘氏に特別講演をいただいたのち、個人研究発表として「共通論題」の部が開催され、続いて「自由論題」の部が行われました。今大会は、個人研究発表の部会を五部会設けて例年より多くし、かつ「共通論題」の部と「自由論題」の部の開催時間をずらし、両部会を聴講できるようにしました。また、國學院大學のご好意により、同大学図書館所蔵の「前九年役合戦絵詞」や「佐佐木(高行)家旧蔵書」などの貴重な軍事史関係史料が終日図書館展示コーナーにおいて公開されました。お陰をもちまして、会員をはじめとして、國學院大學学生の聴講を含み一七四名の参加を得ることができました。

大会は、学術メディアセンター内の常盤松ホールにおいて午前十時から総会が開かれ、はじめに、会長挨拶が行われました。挨拶では、本大会への期待が述べられたのち、今年度の主な活動として、学会誌の特集号の企画、『嶋田繁太郎備忘録』の編纂などについて説明が行われました。引き続き、学会活動の一層の活性化と活動の強化のために、組織改革に取り組んでいることが紹介されました。最後に、国際軍事史学会に関連し、今年度のオランダ大会に会長が参加すること、同学会理事に立候補すること、二〇一三年国際軍事史学会日本大会の開催地の選定及びテーマを「軍事と情報」とすることを検討していること、また、財団法人吉田茂国際基金から三〇万円の助成を受けたことが紹介されました。その後、左記の議案について審議が行われ、いずれも異議なく承認されました。

一 平成二十一年度事業報告及び収支決算報告、会計監査報告
二 平成二十二年度事業計画及び収支予算案
三 会則の一部改定案
四 平成二十二年度役員人事案

なお、議案第三の主な改定は、第一四条の参与の設置、第一五条の総務委員会の廃止と出版委員会の設置、委員長、副委員長及び委員の任期を一年とすることなどです。また、議案第四の主な人事は、影山好一郎理事と波多野澄雄理事が副会長に就任され、二十二年度は副会長四名体制で会長を支えることになりました。
この後、新たに決定された学会のロゴマークが紹介され、デザインを考案・作成した横田浩映会員に謝礼が贈られました。
続いて、十一時から田中氏による特別講演が行われました。「木戸孝允と近代日本―木戸家資料の概要と木戸侯爵家の成立を中心に―」と題した講演は、「木戸家資料」を駆使した研究の成果として、日本の近代化に中心的な役割を果たした木戸侯爵家の誇りと自負を浮き彫りにしたものであり、近代日本の草創期を理解する上で誠に興味深い講演でした。
午後に入り、会場を二号館に移し、まず、個人研究発表の「共通論題」の部が十三時から十五時十分まで二会場に分かれて行われ、続いて、「自由論題」の部が十五時二十分から十七時三十分まで三会場に分かれて実施されました。各部会とも盛況であり、レベルの高い報告が行われ、終始活発な議論が交わされました。各部会の司会及び報告者とそのテーマは下記のとおりです。

部会①「共通論題:幕末維新の戦乱」
司会:淺川 道夫(日本大学)
「撒兵隊と戊辰房総の戦乱」   山本哲也(会員)
「出羽上山藩の戊辰戦争―洋式兵学の導入から降伏恭順まで―」 磯野圭作(会員)
「村田銃の開発―我国における兵器独立に関する考察―」 横田 浩映(陸上自衛隊)
部会②「共通論題」
司会:柴田 紳一(國學院大學)
「紀州藩兵のオランダ式からプロイセン式への転換」 バハ・クサヴィエ(大阪大学)
「西南戦争と海軍」 鈴木隆春(法政大学)
「参謀本部編『手稿本日露戦史』に見る日露戦争―資料概要及び作戦計画と旅順戦を中心に―」 別所芳幸(会員)
部会③「自由論題」
司会:相澤 淳(防衛研究所)
「海軍軍縮期におけるシンガポール海軍基地と日本海軍」 山本文史
(シンガポール国立大学)
「昭和二年南京事件と海軍」 五十嵐憲(会員)
「太平洋戦争における日本海軍の海上交通保護問題への対応に関する一考察―大海令第三十三号の発令経緯の検討―」 坂口 太助(日本大学)
部会④「自由論題」
司会:庄司 潤一郎(防衛研究所)
「『満洲ニ関スル日清協約』の成立と陸軍」 岸田 健司(日本大学)
「日中航空連絡交渉と日中関係―満洲事変後から日中戦争直前まで―」 種稲 秀司(広島大学)
「中華民国における陸軍大学校の受験を巡る諸相」 細井和彦(鈴鹿国際大学)
部会⑤「自由論題」
司会:稲葉千晴(名城大学)
「ハルビン特務機関特別諜報―ソ連の欺瞞工作に対する日本の対応―」 宮杉浩泰(早稲田大学)
「一九三九年(昭和十四年)のソ連対外政策:ノモンハンからポーランドそしてフィンランドへ」 福井義高(青山学院大学)
「戦後防衛政策に関するオーラル・ヒストリーの編さんの現状と課題―防衛研究所戦史部を事例として―」 平山実(防衛研究所)

 部会終了後、若木タワーにある有栖川宮記念ホールに会場を移し、懇親会が十八時から総勢一〇三名の参加を得て行われました。懇親会には講師の田中氏をお招きし、地上一八階からの東京の夜景を堪能しつつ、打ち解けた雰囲気の中で懇談が行われ、今年度の大会は成功裡に終了しました。


(文責・横山久幸)

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