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第43回(平成21年度)年次大会

日時 平成二十一年六月六日(土)~七日(日)
場所 姫路獨協大学及び姫路市周辺史跡(兵庫県姫路市)

 今年度の年次大会は、姫路獨協大学の協力を得て「城塞をめぐる軍事史」を共通テ―マに二日間にわたって開催されました。今回は、城塞に関する軍事的な諸相を幅広く捉えることを試みた大会であり、初日は、姫路獨協大学において、播磨学研究所事務局長の藤原龍雄氏から特別講演を頂き、続いて四会場に分かれて、会員ほかによる研究発表が行われました。二日目は、午前に姫路城を見学したのち、姫路獨協大学副学長の中元孝迪氏から姫路城にまつわる講話を伺い、午後から姫路市周辺の史跡研修を行いました。なお、今年の秋から「姫路城大天守保存修理事業」が行われることもあり、姫路城に対する会員の関心も高く、初日の大会には、多数の市民の方々の聴講を含む一三二名の参加者があり、二日目の史跡研修には五五名の会員の参加を得ました。

まず、初日は、午前十一時三十分から総会が開かれ、はじめに会長挨拶が行われました。挨拶では、昨年度大会の総括と本大会への抱負について触れたのち、今年度の主な活動と平成二十五(二〇一三)年に日本で開催予定の国際軍事史学会国際大会の準備状況について説明が行われました。最後に、会員数の拡大に向けて会員一人一人が取り組むよう要望が出されました。その後、左記の議案について審議が行われ、いずれも異議なく承認されました。

  1. 平成二十年度事業報告及び収支決算報告、会計監査報告
  2. 平成二十一年度事業計画及び収支予算案
  3. 平成二十一年度役員人事案

 続いて、その他の議案として、年会費の増額について会長から提起されました。本件は、学会活動における学術水準の維持・向上と国際軍事史学会国際大会の日本開催に伴う経費を確保するため、平成二十二年度から年会費を二千円増額する(正会員の場合)ことを提案するものであり、採決の結果、賛成多数をもって可決されました。
この後、二年に一度選考される阿南・高橋学術研究奨励賞の授与が行われ、優秀論文として馮青会員の「北洋海軍と日本」(『軍事史学』第四十四巻第四号)が受賞しました。本論文で扱ったテーマは、これまでかならずしも十分な研究が行われていない分野であり、かつ、清国側から解明を試みる着眼を持って、関係史料を博捜した軍事史らしい論文であることが評価されました。

午後に入り、開催校の姫路獨協大学学長の大塚健洋教授から歓迎の挨拶を頂きました。挨拶では、大学の建学精神が「地域に貢献する大学」であり、市民に開かれた学会の大会として成功することを祈念するとのお言葉を頂きました。続いて、十三時四十分から藤原氏による特別講演が行われました。「姫路城開城―譜代姫路藩の明治維新―」と題した講演は、一級史料を駆使して幕末から明治維新にかけての激動期を生き抜いた姫路藩の苦悩を浮き彫りにしたものであり、時代の変革期における生き残りの戦略を理解する上で非常に示唆に富む講演でありました。
その後、個人研究発表が四会場に分かれて十五時から十七時十分まで行われました。部会①及び部会②を共通論題とし、部会③及び部会④を自由論題として発表者個々の研究成果が報告されました。各会場ともレベルの高い報告であり、終始活発な議論が交わされました。各部会の司会、報告者及びテーマは下記のとおりであります。

 部会①「共通論題:城塞の役割と戦略」
司会:相澤 淳(防衛研究所)
「竹ヶ鼻城攻防戦をめぐる豊臣秀吉の戦略と輪中―既存資料の再吟味から―」 水谷 英志(会員)
「幕末の江戸湾海防と台場」 淺川 道夫(拓殖大学)
「明治期における大阪湾防衛―要塞砲台を中心に―」 原  剛(元防衛研究所)
部会②「共通論題:城塞をめぐる戦術」
司会:太田 弘毅(元東北女子大学)
「広狭二義の『一ノ谷』地名―『平家物語』と鵯越―」 田辺 眞人(園田学園女子大学)
「陣城からみた賤ヶ岳合戦―縄張り構造の分析を中心として―」 中井 均(城館史料学会)
「天守の防衛」 高田 徹(城館史料学会
部会③「自由論題:日本赤十字社の人道援助活動」
司会:黒沢 文貴(東京女子大学)
「博愛社から日本赤十字社へ―近代日本における人道と愛国―」 小菅 信子(山梨学院大学)
「日露戦争における日本赤十字社の戦時救護活動」 喜多 義人(日本大学)
「明治大正期における日本赤十字社の平時事業」 河合 利修(日本赤十字豊田看護大学)
部会④「自由論題:近代日本の政治と軍事」
司会:柴田 紳一(国学院大学)
「月曜会事件に関する若干の問題」 高杉 洋平(宮内庁書陵部編修課)
「石原莞爾と里見岸雄―里見宛石原書簡を中心として―」 金子 宗徳(里見日本文化学研究所/姫路獨協大学)
「皇族と軍事」 浅見 雅男(文藝春秋)
 二日目は、八時三十分から史跡研修が行われ、午前中は地元のボランティア・ガイドの案内により姫路城を見学し、続いて姫路市立美術館において姫路獨協大学副学長の中元孝迪氏による「姫路城物語―美の秘密―」と題した講話が行われました。講話では、「姫路城の美しさ」に関し、建築工学的な観点からだけでなく、築城におけるコンセプトと「美」との関係についても言及され、大変興味深い講話でありました。また、市立美術館のレンガ造りの建物は旧陸軍が第十師団諸部隊への兵器の補給と修理のために開設した姫路の兵器支廠の兵器庫を利用したものであり、その歴史について講話終了後に原剛副会長から説明がありました。午後からは、手柄山山頂に建立された「太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔」に参拝したのち、「姫路市平和資料館」を見学しました。その後、姫路城第十一代城主の榊原忠次とその子政邦等の墓所がある増位山随願寺とその周辺の史跡を見学し、二日間にわたる年次大会を終了しました。

なお、懇親会は大会初日、姫路城が一望できる「イーグレひめじ」内のレストランに会場を移し、十八時三十分から行われました。懇親会には、講師の藤原氏をはじめ、開催校として協力を頂いた姫路獨協大学の大塚学長、中元副学長、並びに姫路駐屯地司令の藤木隆志氏をお招きし、総勢八一名の参加を得て、打ち解けた雰囲気の中で行われました。        (文責・横山久幸)

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