講師:伊藤頌文氏(防衛研究所戦史研究センター研究員)
牧野邦昭氏(慶應義塾大学経済学部教授)
演題:(伊藤氏)「新冷戦期ヨーロッパにおける安全保障問題の一試論:地中海地域を中心に」
:(牧野氏)「太平洋戦争開戦と日本の経済力調査」
日時 令和4年9月17日(土) 14:00~17:00
場所 Zoomオンライン会議
令和4年度も新型コロナ感染症流行対策として、第1回例会はZoomオンライン会議形式で開催された。伊藤報告においては、新冷戦期における地中海地域の安全保障問題がマクロな視点から論じられた。この地域は米ソの軍事的駆け引きの舞台となる一方で、南欧諸国の民主化に伴い、民主主義、人権、法の支配という普遍的価値の重視が実質化され、それが安全保障をめぐる問題と連動したことなどが指摘された。
牧野報告においては、日米開戦前夜、日本の指導者層には、正しい情勢見通が存在していた。日米戦争の決断を前に、日米の国力の格差や石油備蓄の見通しも相当程度公開されていた。しかし意思決定において「希望的観測」が高く評価されてしまい、石油があり、ドイツが抗戦力を維持しているうちに短期決戦を挑めば有利な講和ができるかもしれないと、日米開戦につながる決定に至った。正確な情報がありながら、適切な意思決定ができないことがあるという大変難しい問題が提起された。
今回のこの2つの報告は、共通することは少ないが、研究の方向性の新しい息吹を感じ取ることができた。