日時 令和3年9月18日(土)
場所 Zoomオンライン開催
本年度の年次大会は、当初、対面・オンラインハイブリッド形式で開催する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、Zoomオンライン形式のみで「軍事とスポーツ」をテーマに実施しました。
午前9時40分からTKP新橋汐留ビジネスセンターを中継拠点としてオンライン上で総会が開かれ、次のような議案が報告・審議されて何れも異議なく承認されました。
一、令和二年度事業報告および収支決算報告、会計監査報告
二、令和三年度事業計画および収支予算案
三、令和三年度阿南・高橋学術奨励賞選考結果報告
このうち阿南・高橋学術奨励賞は、『軍事史学』に掲載された論文の中から最優秀論文を隔年で選考するもので、厳正な審査の結果、今回の受賞は第五十六巻第一号に掲載した長谷川優也会員による論文「旧陸軍の秘密書類管理制度と終戦前後の文書焼却」と決定しました。
総会終了後、10時30分から木下秀明氏(元日本大学教授)を講師として、「戸山学校研究から見た体操、剣術、集団球技」と題する基調講演がおこなわれました。今回の講演では、①『偕行社記事』掲載の基礎史料と軍事史の関わりとはなにか、②一九二〇年代に日本語に定着した「スポーツ」の根源とは何か、③一九一六年『体操教範草案』「付録」の「競技」以降の試行錯誤とはなにか、④スポーツは軍事技術から生まれ、軍事技術はスポーツから学んだこと、⑤洋式にはじまった軍刀術と銃剣術が日本在来の剣槍術化しながら、「試合」重視で実質スポーツ化した経緯、という軍事とスポーツをめぐる五つのテーマを主軸に、長年のご研究の成果に基づいてお話しいただきました。
続いて11時30分から、三部会から成る個人研究発表が、次のような内容で実施されました。
第一部会 司会:相澤淳(防衛大学校)
「軍令の運用実態に関する研究(明治40年―昭和12年)―主に予算財源の観点から―」
徳田道之(海上自衛隊幹部学校)
「海上自衛隊史ハイライト―ポスト四次防における海上防衛力近代化を中心に―」 相澤輝昭(防衛大学校)
第二部会 司会:竹本知行(安田女子大学)
「幕末~明治期における銃剣術教育」
淺川道夫(日本大学)
「幕末期における仙台藩士の軍制改革構想に関する一考察」 竹ヶ原康佑(明治大学大学院生)
「第二次長州出兵と延岡藩―芸州口への出兵を中心に―」 古林直基(福岡大学大学院生)
第三部会 司会:庄司潤一郎(防衛研究所)
「戦間期日本陸軍の人材育成―下士官教育についての考察―」 佐谷夢子(会員)
「戦後日本の安全保障政策における基本方針の変容―戦略守勢から専守防衛へ―」 真田尚剛(立教大学)
「神風特別攻撃隊菊水雷桜隊が特攻隊に認定された経緯―特攻の定義の再考―」 畑中丁奎(会員)
個人研究発表終了後、17時25分から高嶋航氏(京都大学教授)を講師として、「満洲における軍事とスポーツ」と題する特別講演がおこなわれました。講演では、①外地の軍隊とスポーツの関係はどうだったのか、②内地の軍隊との間に違いはあるのか、③もしあるとすればそれはなぜなのか、という三つの課題について、満洲を事例に、緻密なご研究の成果をお話していただきました。
基調講演並びに特別講演は、講演内容をもとに執筆頂いた「特別寄稿」および「論文」を収録しましたのでご覧ください。
特別講演の質疑応答の後、淺川道夫大会委員長が閉会を宣言し、令和三年度の年次大会は終了しました。
本年度の年次大会はオンライン開催のため、例年行われていた懇親会と史跡研修は実施致しませんでした。
オンラインでの年次大会開催という前例のない取り組みにもかかわらず、大きな問題もなく閉会することができたのは、難しい環境下でも日ごろの研究成果を発表してくださった発表者の皆様のお陰であります。当日の運営に当たってくださったスタッフの方々も含め、深く感謝申し上げます。
最後に基調講演、特別講演の講師として、共通テーマ「軍事とスポーツ」に深い知見を与えてくださり、学術議論の活性化に導いてくださった木下秀明先生、高嶋航先生に大会委員一同、厚く御礼申し上げる次第です。
(文責・笠原孝太)