◇年次大会報告

第四十六回(平成二十四年度)
軍事史学会年次大会報告

日時 平成二十四年六月二日(土)~三日(日)
場所 日本大学国際関係学部(静岡県三島市)及び静岡県東部地域史跡研修


大会会場
 今年の年次大会は、「軍事をめぐる国際交流」を共通テーマとして、日本大学国際関係学部において二日間にわたって開催されました。初日は、午前中に日本大学国際関係学部教授吉本隆昭氏から基調講演を頂き、午後には「第二次世界大戦をめぐる戦後和解」をテーマとするパネルディスカッションと、個人研究発表(四会場・一二名)がおこなわれました。また、伊豆にかかわる幕末の軍事資料と、大学キャンパス周辺にあった野戦重砲兵連隊関係資料の展示をおこない、併せて近在の野戦重砲兵連隊史跡見学も実施しました。二日目は、午前中に日本大学国際関係学部において、伊豆学研究会理事長の橋本敬之氏から特別講演を頂いた後、伊豆の国市韮山の江川邸を見学し、午後からは沼津市明治史料館見学と陸上自衛隊第一機甲教育隊での研修をおこないました。大会初日には一五五名の参加があり、二日目の史跡研修には会員八五名の参加がありました。

総会

 六月二日(土)には、日本大学国際関係学部三島駅北口校舎の大会会場において、午前十時から総会が開かれ、はじめに会長挨拶がおこなわれました。この挨拶では、平成十四年から一〇年間にわたって会長の重責をつとめられた高橋久志上智大学教授から御勇退の表明があり、次期会長に黒沢文貴東京女子大学教授が就任されることが決まりました。その後、左記の議案に関する審議・報告がおこなわれ、何れも異議なく承認されました。

 一 平成二十四年度役員・委員人事
 二 平成二十三年度事業報告及び収支決算報告、会計監査報告
 三 平成二十四年度事業計画及び収支予算案

 

開催校挨拶

基調講演

パネルディスカッション
このうち議案一に関して、高橋久志前会長と原剛前副会長が顧問に、また永江太郎・中山隆志前監事が参与に就任されて、白石博司・葛原和三会員が監事となり、庄司潤一郎理事が副会長、荒川憲一・小菅信子・河野仁・戸部良一・吉本隆昭会員が理事に就任することが承認されました(詳細は一七一頁を御参照下さい)。委員長人事では広野好彦理事が関西支部委員長に就任しました。
 続いて十時四十分から、日本大学国際関係学部長の佐藤三武朗教授より歓迎の御挨拶を頂きました。この御挨拶では、日本歴史の中での伊豆と軍事のかかわりについてお話し頂くとともに、「軍事をめぐる国際交流」を大会の共通テーマとしたことに敬意を表され、今回の年次大会の成功を祈念する旨のお言葉を頂きました。
 さらに十一時から、吉本隆昭教授による「軍事交流からみた日独関係」と題する基調講演がおこなわれました。この講演では、一七世紀以来約三七〇年に及ぶ軍事分野の交流のうち、一八六四年の日本・プロイセン国交樹立から一九四五年の第二次世界大戦終結までを概説して頂きました。その中で示された「第二次世界大戦において同盟国として運命を共にした日本とドイツは、通常の二国関係を超えた重要かつ親密な関係にあったといえるが、それは誤解・齟齬・反発・対立を含んだ複雑なものだった」とする指摘は、示唆に富んだものでした。
 十三時からは、沼田貞昭(元カナダ・パキスタン大使、元在英大使館特命全権公使)、小菅信子(山梨学院大学教授)、コンスタンティン・サルキソフ(法政大学教授)の三氏をパネリストに迎えて、「第二次世界大戦をめぐる戦後和解」をテーマとしたパネルディスカッションがおこなわれました(詳細については、本誌四~一七頁の沼田氏の特別寄稿を御参照下さい)。続いて十四時四十分から個人研究発表がおこなわれ、「共通論題」と「自由論題」に分かれて、会員が日ごろの研究成果を発表しました。各部会の報告者と司会者は次の通りです。




部会①「共通論題」                     司会:立川京一(防衛研究所)

一七世紀における日独軍事交流―ハンス・ヴォルフガング・ブラウンの業績を中心に―
                    A・H・バウマン(日本大学)

大村益次郎における洋式兵学の受容と実践
                    竹本知行(同志社大学)

イギリス海軍にとっての東アジアの重要性と日本の位置付け―中国戦隊からみた19世紀後半の東アジアと日本―
                     尾﨑庸介(大阪学院大学)
部会②「共通論題」                    司会:河合利修(日本赤十字豊田看護大学)

中華民国国民政府の海軍教育と日本人教官
                    馮青(玉川大学)

戦間期の日米軍関係者の交流活動―日米協会所蔵資料から―
                    飯森明子(常盤大学)

対ソ予防戦争説再考―ジューコフ証言から見たスヴォロフ説の根拠について―
                    守屋純(名古屋市立大学)
部会③「自由論題」                    司会:柴田紳一(国学院大学)

動力付重航空機の飛行へむけての日本海軍の取り組み
                    柳澤潤(航空自衛隊幹部学校)

日本海海戦後の軍事戦略―北韓作戦を中心に―
                    平野龍二(海上自衛隊幹部学校)

戦時メディア「慰問雑誌」研究―『陣中倶楽部』『戦線文庫』を中心にして―
                    押田信子(横浜市立大学)
部会④「自由論題」                    司会:池田直隆(国学院大学)

南京国民政府時期の陸軍大学校の組織機構及び教学内容
                    細井和彦(鈴鹿国際大学)

継続戦争(第二次ソ連・フィンランド戦争一九四一―四四年)と捕虜
                    アンッティ・クヤラ(ヘルシンキ大学)

ソ連軍資料およびロシアでの研究成果からみた張鼓峯事件の実像
                     笠原孝太(日本大学)


個人研究発表

個人研究発表

懇親会

特別講演

史跡研修
 個人研究発表終了後、十七時より日本大学国際関係学部キャンパス周辺に残る、野戦重砲兵第二・第三連隊関係の史跡見学を実施しました。その後十八時から、大会会場となった三島駅北口校舎七階の学生食堂において、懇親会がおこなわれました。この会では、パネリストの沼田貞昭氏、コンスタンティン・サルキソフ氏ほか六名の方をお招きして、なごやかな雰囲気の中、会員の歓談がおこなわれました。懇親会への参加者は一一一名に及び、前回の伊勢大会に続き盛会でした。

 六月三日(日)は、大会会場である三島駅北口校舎一階大教室(山田顕義ホール)において、午前八時から橋本敬之氏(伊豆学研究会会長)による「江川坦庵と近代科学」と題する特別講演がおこなわれました。橋本氏は財団法人江川文庫の史料管理に携わられており、二〇〇四年から実施されている同文庫の史料調査の経過や、調査によって発見された様々な史料からうかがうことのできる、江川坦庵(英龍)のもつ近代科学への視座について、わかりやすくお話し頂きました。この講演を通じ、史跡研修先となっていた江川文庫についての予備知識をもつことができました。
 続いて午前九時には、大型バス二台に分乗して史跡研修が開始されました。まず韮山の江川文庫を訪問し、現存する江川邸の諸施設を見学したのち、邸内の一室で今回の研修のために特別公開して頂いた幕末の古文書・兵器類を間近で実見しました。また、江川坦庵直筆の製法書から復元した幕末の兵糧パン「カネイルコックカステイラ」を、今回の研修に際して焼いて頂き(平常は市販していない)、実費で頒布してもらいました。
 昼食後、バスで沼津市明治史料館に移動し、沼津兵学校関係の史料を中心に見学しました。同史料館では、主任学芸員の木口亮氏に、沼津兵学校の沿革を詳細に御説明頂きました。同館には沼津兵学校関係史料のほか、沼津市にかかわる近世~近代の史料が常設展示されており、特に海軍工廠や沼津空襲の史料に多くの会員が関心を寄せていたようでした。
 続いて御殿場の東富士演習場に向かい、第一機甲教育隊の演習を見学しました。演習場入口でバスを降り、自衛隊側が用意してくれたカーゴに乗り換えて演習場内を進みました。第一機甲教育隊では、一〇式戦車を間近で見学させてもらい、あわせて機甲戦の展示演習を実施して頂きました。参加者一同、興味の尽きない内容で、充実した研修となりました。
 史跡研修の最後に、御殿場で「防衛技術博物館(戦車博物館)」設立に向けた活動をされている小林雅彦氏(株式会社カマド代表取締役社長)の会社を訪問し、小林氏所蔵の軍用車輌を見学させて頂きました。
 史跡研修は、学会の年次大会が地方で開催される際の一大イベントであり、今回八五名の参加者を得て盛況のうちに実施することができました。研修にあたっては、財団法人江川文庫の橋本敬之氏と、陸上自衛隊第一機甲教育隊の南清治氏、さらに自衛隊静岡地方協力本部の皆様にはひとかたならぬお世話になりました。また、今大会の開催にあたって静岡県東部地域コンベンションビューローから支援を頂くことができました。会員一同深く御礼申し上げます。
(文責・淺川道夫)

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