◇年次大会報告

第四十二回(平成二十年度)
軍事史学会年次大会報告


日時 平成二十年五月三十一日(土)〜六月一日(日)
場所 広島国際大学呉キャンパス、大和ミュージアム(広島県呉市)及び海上自衛隊江田島地区(同江田島市)

総会の様子
広島国際大学副学長 大場新太郎教授の
開催校挨拶
金谷匡人氏による講演
個人研究発表(部会1)
個人研究発表(部会2)
個人研究発表(部会3)
個人研究発表(部会3)
2日目 パネルディスカッション
パネラーのみなさん
2日目 パネルディスカッション
2日目 パネルディスカッションを聴講される
呉市の小村和年市長
2日目 海上自衛隊江田島地区
史跡研修の様子
2日目 海上自衛隊江田島地区
史跡研修の様子
初日の懇親会
  今年度の年次大会は、広島国際大学の支援を受け、呉市との共催により「日本のシー・パワー」を共通テーマに二日間にわたって開催されました。今回は、日本におけるシー・パワーの生成と発展を軍事史的視点から取り上げることを試みた大会であり、初日は、広島国際大学呉キャンパスにおいて、特別講演として郷土史の視点から歴史・民族研究家の金谷匡人氏による講演が行われ、続いて、会員による研究発表が五会場に分かれて行われ、うち一会場では呉大会特別企画の一つとして海軍工廠の発展を取り上げた報告が行われました。二日目は、会場を大和ミュージアムに移し、呉大会特別企画として「軍事史研究と戦争展示」をテーマにパネル・ディスカッションが行われ、続いて、海上自衛隊江田島地区にある旧海軍の史跡及び資料館の研修が行われました。海軍研究などを通じて、呉市や江田島市に対する会員の関心が極めて高く、初日の大会には一四〇名が、二日目のパネル・ディスカッション及び江田島研修にも一〇〇名前後の会員の参加を得ました。特に、江田島地区研修は予想を大幅に上回る参加でありました。また、呉市の関係部署及び関連団体等の協力により、二日間にわたって多数の市民の方々の参加を得ることができたことも本大会の大きな成果であります。

 まず、初日は、午前十一時三十分から総会が開かれ、会長挨拶に先立ち、義井博顧問のご逝去を悼み一分間の黙祷が捧げられました。続いて、会長挨拶が行われ、十九年度学会活動の総括、国際軍事史学会国際大会の二〇一三年度日本開催に対する協力要請及び新会員獲得へ向けた要望などが行われました。その後、左記の議案について審議が行われ、いずれも異議なく承認されました。
 一 平成十九年度事業報告及び収支決算報告
 二 会計監査報告
 三 平成二十年度事業計画及び収支予算案
 続いて、「平成二十年度役員人事」に入り、瀬島龍三特別顧問の死去にともなう退任のほか、理事及び監事の退任、就任などが承認されました。

 午後に入り、開催校の広島国際大学副学長の大場新太郎教授から歓迎の挨拶を頂きました。歓迎挨拶では、同大学呉キャンパスが旧海軍工廠工員養成所の地に建っていることなどが紹介され、歴史の巡り合わせの地で大会が成功することを祈念するとのお言葉を頂きました。続いて、十三時四十分から金谷氏による「海賊たちの中世」をテーマとした特別講演が行われました。講演では、海賊の特質とその力の源泉について村上水軍のネット・ワークの生成と瀬戸内海という場の力をキーワードとしたお話を頂き、日本のシー・パワーのルーツを理解する上で貴重な示唆を頂きました。
 十五時からの個人研究発表では、一五名の会員が五会場に分かれて報告を行いました。部会@から部会Bを共通論題とし、部会@では共同研究の成果が報告されました(成果報告は、本誌三八頁「日露戦争期の海軍工廠の実態と役割」参照のこと)。また、部会C及びDを自由論題とし、発表者個々の研究成果が報告されました。各会場ともレベルの高い報告であり、終始活発な議論が交わされました。各部会の司会、報告者及びテーマは左記のとおりであります。
部会@「共通論題:日露戦争期の各海軍工廠の位置付けと役割」
司会:千田 武志(広島国際大学)  
平間 洋一(元防衛大学校)「軍器独立と明治期の横須賀海軍工廠」
千田 武志(広島国際大学) 「呉海軍工廠の発展と役割」
奈倉 文二(独協大学) 「日露戦争期の各海軍工廠の生産体制」
部会A「共通論題」
司会:淺川 道夫(東京理科大学)
山本 哲也(会員) 「佐倉藩と幕末の江戸湾防衛について」
小野 圭司(防衛研究所)「明治期海軍建設の経済合理性―海軍力整備における技術的制約と費用対効果―」
高橋 衛(元福山大学)「明治30年代の海軍軍縮交渉」
部会B「共通論題」
司会:等松 春夫(玉川大学)
久野 潤(大阪国際大学)「支那事変の拡大と日本海軍―組織と知的人脈、そしてその影響力―」
児島 健介(海自輸送艦くにさき)「軍艦外務令からみた船舶等の保護」
アレッシオ・パタラーノ(ロンドン大学KLC)「『海軍』から『海自』へ―戦後日本のシー・パワー1976-1995―」
部会C「自由論題」
司会:影山 好一郎(元防衛大学校)
諸星 秀俊(会員)「征韓論の軍事的側面―西郷隆盛・板垣退助の作戦構想―」
藤田 賀久(上智大学)「近代中国を舞台としたソフトパワー・ポリティックスと日本―対華文化事業と岡部長景―」
大前 信也(同志社女子大学)「陸軍機密費について」
部会D「自由論題」
司会:根無 喜一(大阪学院大学)
大原 俊一郎(京都大学)「ヴィルヘルム・シュティーバーとプロイセン参謀本部の対峙」
山本 崇人(近畿大学付属高校)「エリヒュー・ルート長官によるアメリカ合衆国の軍制改革について―二十世紀アメリカ陸軍発展の起点としてのその重要性―」
細井 和彦(鈴鹿国際大学)「陸軍大学校(中国)の南遷と発展について」
 二日目は九時三十分から「軍事史研究と戦争展示」をテーマに、庄司潤一郎会員の司会で以下の四名の会員パネリストによるディスカッションが行われました。本パネル・ディスカッションは博物館における展示を通じて戦争を如何に後世に伝えるかという点について、軍事史研究の立場からそれぞれの専門的な立場から討論を行っています(討論の細部は、本誌九頁「平成二十年度(第四十二回)軍事史学会年次大会パネル・ディスカッション」参照のこと)。
  展示全般:鈴木 淳(東京大学)
  陸軍関係:原  剛(軍事史学会副会長)
  海軍関係:戸高 一成(大和ミュージアム)
  海外展示:田村 恵子(オーストラリア戦争記念館)

 午後に入り、十二時二十分から海上自衛隊江田島地区に移動し、基地内の大講堂、教育参考館仮展示室、海軍兵学校生徒館(通称、赤レンガ)、戦艦陸奥の主砲などを研修しました。研修では、海上自衛隊第一術科学校の全面的な支援を受け、それぞれの施設で懇切丁寧な説明を受けました。まさに海軍伝統の重みを今に伝えるものばかりであり、日本におけるシー・パワーを軍事史的視点から取り上げることを試みた今大会に相応しい史跡研修でありました。

 なお、懇親会は大会初日、クレイトンベイホテルに会場を移し、十八時十五分から行われました。懇親会には、講師の金谷氏をはじめ、共催を頂いた呉市の小村和年市長及関係職員の方々、開催校として協力を頂いた広島国際大学の先生方並びに呉総監部幕僚長、呉市の海友会会長、同事務局長をお招きし、総勢一二〇名以上の参加を得て、打ち解けた雰囲気の中で行われました。特に、小村市長にはご多忙中のところ駆け付けて頂き、歓迎の挨拶と学会に対する励ましのお言葉を頂いたことにより、会員と市民の方々との一層の交流と参加者相互の親睦を図ることができました。
(文責 横山久幸)

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