◇年次大会報告

第四十回(平成十八年度)
軍事史学会年次大会報告


日時 平成十八年五月十三日(土)〜十四日(日)
場所 かごしま県民交流センター(鹿児島市)

 今年度の年次大会は、神戸大会(第三十六回)以来四年ぶりに関東地区を離れ、鹿児島市において「近代日本と鹿児島」を共通テーマとして、鹿児島県及び鹿児島市を始めとした関係各方面の多大なご支援を得て二日間にわたって開催されました。第一日目は、約八十名の会員の参加を得たほか、軍事史学の普及を兼ねて一般公開としたところ、鹿児島市などから百名以上の非会員の方も聴講し、地方大会ならではの活発な交流が行われました。今大会の共通テーマは、近代日本の国家建設に果した鹿児島の軍事史上の意義と役割を、より広い視点から見直そうとしたものであります。このため、地元鹿児島の郷土史研究では第一人者である高蜍B西郷南洲顕彰館館長及び原口泉鹿児島大学法文学部教授からそれぞれ講演を頂き、さらに個人研究発表では、「幕末・維新期薩摩藩の戦略」及び「薩摩藩と近代の戦争」を共通論題部会の個別テーマとして会員による報告が行われました。第二日目は、開催地が「近代日本の幕開け」を告げた多くの史跡を保存していることから、年次大会としてはやはり神戸大会以来となる史跡研修が行われ、四十名以上の会員が西南戦争の遺跡などを研修しました。

 なお、大会業務に関して簡素化・合理化を進めておりますが、今大会の史跡研修の企画・運営及び宿泊・交通についてもツアー形式による部外依託としました。初の試みではありましたが、会員各位の協力により大会担当会員の負担を一層軽減することができました。

 まず、第一日目は、午前十一時三十分から総会が開かれ、始めに議事に入り左記の議案について審議が行われ、いずれも異議なく承認されました。

  一 平成十七年度事業報告及び収支決算報告
  二 会計監査報告
  三 平成十八年度事業計画・収支予算案

 続いて、「平成十八年度役員人事」に入り、任期満了の高橋久志会長が引き続き改選されたほか、戸部良一副会長及び原剛副会長の留任などが決定しました。その後、会長挨拶が行われ、挨拶では、鹿児島で大会を実現できたことに関し、ご協力・ご支援を頂いた方々への謝辞があり、保岡興治衆議院議員と森博幸鹿児島市長からの祝辞が紹介されました。続いて過去の大会を振り返って本学会の発展の軌跡をたどりつつ、改めて、近代日本の国家形成に多大な影響があった鹿児島で大会を開催することの意義が強調されました。また、軍事史学会の更なる発展を期して、会員増加の呼びかけが行われました。

 午後に入り、十三時三十分から高蜴≠ノよる記念講演が行われました。「西郷と大久保 対立の真相」と題した講演では、西郷研究三十年の実績と豊富な資料に基づき、西郷と大久保の対立が両者の人生観の相違にあったことを克明に解き明かされ、郷土史家でなければ拝聴できない貴重なご意見を頂きました。続いて、十四時五十分から原口氏による基調講演が行われました。「薩摩藩の軍事力と近代化─戊辰戦争をいかに戦ったのか─」と題した講演では、薩英戦争から説き起し、函館戦争までの薩摩藩の軍事・外交・産業の諸改革と新生国家建設に果した役割について論じられ、じ後の個人研究発表に対する貴重な示唆を頂き、かつ議論を盛り上げるものとなりました。

 個人研究発表は、十五時五十分から十八時まで四会場に分かれ各会場三名、合計十二名の会員による報告が行われました。部会@及び部会Aでは、共通論題が取り上げられ、また部会B及びCでは自由論題として発表者個々のテーマが報告されました。各会場ともレベルの高い報告であり、終始活発な議論が交わされました。報告者とテーマは左記のとおりであります。

部会@「共通論題:幕末・維新期薩摩藩の戦略」           司会 庄司潤一郎
永江 太郎 「幕末における薩摩藩の国家戦略─島津斉彬と西郷隆盛を中心に─」
淺川 道夫 「幕末維新期における薩摩藩の兵制改革」
竹本 知行 「大久保利通の建軍構想─明治初期における薩長対立の背景」

部会A「共通論題:薩摩藩と近代の戦争」              司会 菅野直樹
原   剛 「薩英戦争における戦闘の実態とその影響」
高橋 信武 「西南戦争の戦跡─大分県佐伯市宇目─」
太田 文雄 「情報と薩摩」

部会B「自由論題」                        司会 相澤 淳
黒沢 文貴 「日本軍の連合軍捕虜の取扱いに関する一考察」
山本 智之 「日本陸軍軍人の戦中・戦後史─『主流派』・『非主流派』の交代劇をめぐって」
劉   紅 「胡適とアメリカ」

部会C「自由論題」                        司会 進藤裕之
太田 弘毅 「薩摩地方と倭寇」
杉之尾宜生 「戦史の先行研究の活用─『失敗の本質』から『戦略の本質』へ」
岡本 宜高 「第一次EEC加盟申請とイギリス外交─冷戦と欧州統合のはざまで─」

 大会終了後、鹿児島サンロイヤルホテルに会場を移し、十九時十五分から懇親会が開かれました。懇親会には、講師の高蜴=A原口氏及び薬丸野太刀自顕流の東隆一総師範ほか地元の関係者をお招きし、また、保岡議員はお祝に駆けつけて下さいました。かくして総勢七十名ほどの参加を得て、打ち解けた雰囲気の中でさらに意見を深め、会員相互の親睦と地元との交流を図ることができました。

 第二日目は、朝八時から史跡研修が行われ約四十名の会員が参加しました。史跡研修では、講師の原口氏も案内役として同行され、午前中は多賀山公園、仙厳園・尚古集成館、薬丸野太刀自顕流見学、南洲神社・南洲墓地、西郷南洲顕彰館を見学し、昼食後、西郷洞窟、西郷隆盛・従道、東郷平八郎誕生地などがある加治屋町周辺を散策しました。案内役の原口氏には研修の終始を通じてユーモアあふれる軽快な説明を、また東氏には鹿児島に古くから伝わり、「明治維新をたたき上げた」といわれる自顕流の懇切丁寧な解説を頂きました。鹿児島における史跡研修は、両氏の知識・造詣の深さに感銘をうけつつ、実地に学ぶことができた収穫ある研修となりました。

 なお、本大会開催に当たり、快く後援して下さった鹿児島市教育委員会、鹿児島県教育委員会、南日本新聞社、そして、南日本放送の関係各位に対し、厚く御礼申し上げます。そして、最後になりますが、現地にあって常に大会の成功のためにあらゆる努力を惜しまなかった鹿児島応用技術株式会社の岩切良文氏の協力なしには本大会の実現は不可能であったことをここに記し、岩切氏に心からお礼申し上げます。

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